腹壁形成(タミータック/腹部リダクション)とは
ダイエットなどでできた余剰皮膚を切除することが「腹壁形成(腹部リダクション・タミータック)」です。
肥満の人が多いアメリカで、高度肥満の患者さまが受ける治療に、消化管(胃や腸)を小さくしたり、短くしたりする手術があります。これで食物を摂取しにくくしたり、栄養の吸収を少なくするのです。肥満の患者さまはてきめんに痩せてきますが、周囲の皮膚は余剰になり、溶けた蝋燭のように垂れ下がってしまいます。この余剰皮膚を切除することが「腹壁形成(腹部リダクション・タミータック)」です。

日本で行われる腹壁形成(腹部リダクション・タミータック)
腹部の脂肪吸引をおこなうと、余剰となった皮膚が下腹部に垂れ込み、体の線が不恰好になります。
脂肪吸引後、あるいは急激に痩せて、腹部の皮膚や皮下組織が前垂れのように垂れ下がった場合、腹部の余剰皮膚を切除し腹直筋を引き締める手術があります。
脂肪吸引、あるいは急激なダイエットで痩身に成功すると
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余剰皮膚が前垂れのように、あるいは溶けた蝋燭のように垂れ込んでしまいます。
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そこで余剰皮膚を切除します。これがリダクション(タミータック)です。
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下腹部に傷が残ります。
腹部脂肪切除(タミータック)の手術の欠点と利点
腹部脂肪切除(タミータック)のメリット
脂肪吸引と異なり、弛んだ皮膚を除去できることは大きなメリットです。また、腹部であれば腹直筋を引き締めることで腰のくびれを創ることができます。上腹部と下腹部での脂肪切除では、皮膚が伸びるので、体幹が若々しく見えるようになります。

腹部脂肪切除(タミータック)のデメリット
腹部に長い傷跡が残ることです。そのため傷跡が目立たなくなるように、形成外科の丁寧な縫合を行います。また、傷跡のアフターケアをしっかり行います。
術後経過とアフターフォロー
腹部脂肪切除(タミータック)手術では、術後1日入院します。
退院時にドレーンを抜去し、しっかり包帯固定(腹部コルセットまたは腰痛バンド)をします。
手術3日後、傷の状態をチェックを行いシャワー浴が可能になります。
術後1週間で、包帯固定を外します。
術後10~14日までに抜糸を完了します。
ご自分で消毒を行っていただき、ガーゼを当てコルセットや腰痛ベルト等で圧迫を行うことで、ご自宅でのフォローが可能です。
腫れや内出血は、3~4週間で治まりますが、概ね落ち着くまでには2~3ヶ月かかります。
瘢痕が目立たなくなるまでには、約1年かかります。また、瘢痕が完全に落ち着いて線状になるまでには3~5年かかります。

腹部脂肪切除(タミータック)の手術の実際





下腹部のみの切開による腹部リダクション
下腹部のみの切開による腹部リダクションのデザイン
下腹部の切開による腹部リダクション(タミータック)では、下腹部から側腹部に切開予定線を考えていきます。
切開予定の高さは、陰毛の発生部位からにします。
皮下剥離は腹直筋筋膜のうえで行い、お臍を超えて鳩尾近くまで到達します。
写真は、腹部リダクションの実際のデザイン例です。
下腹部の部分を切除し、へそ上の囲われた部分は、剥離を進めていきます。

デザイン
腹部脂肪切除(タミータック)手術の切開から剥離まで
腹腹部脂肪切除での切開
下腹部に長い横切開を入れていきます。
お臍の周囲にも円を描くように切開を入れていきます。
このとき切開の深さは、脂肪層を超えて筋膜の直上までとします。
腹腹部脂肪切除での剥離
腹直筋上を胸部に向かって剥離を進めていきます。
(fig5)
図は、腹腹部脂肪切除(タミータック)手術で、下腹部の切開から腹直筋膜上を胸部に向かって十分剥離を進めた状態です。
お臍は腹部から血行を考慮して、島状に残しています。
腹部脂肪切除(タミータック)手術の剥離範囲は、皮弁の血行を考えながら決定します。
腹部の剥離が多いほど腹部の余剰皮膚と皮下脂肪の切除が多くなります。
しかし、腹部の剥離範囲が大きくなることにより、皮弁の血行が悪化しやすくなり、場合によっては縫合不全が起こるともありますので、剥離範囲は慎重に決めていきます。
余剰の皮膚や皮下脂肪の切除が多い場合は、お臍の位置を上にずらします。この場合は、新たなお臍の位置を決めた後、皮膚に切開を入れてそこからお臍を引き出します。
fig5.腹直筋上を胸部に向かって剥離
腹直筋の縫縮
腹直筋を中心で縫縮していきます。
こうすることで、両側の脇腹のひきしめて、腰のくびれが表現できます。
余剰皮膚の切除と新たなお臍位置をデザイン
腹部の皮弁を引き延ばして、余剰の皮膚と皮下脂肪を一塊にして切除をしていきます。
このとき、縫合創に過剰の緊張がかからないように注意をしていきます。
また、余剰皮膚の切除量が多い場合は、元あったお臍の位置が下方へ移動するため、新たにお臍の位置をデザインして、先ほど島状に残したお臍を新たに形成していきます。
元あったお臍の部分は、縫合します。
fig9.余剰皮膚の切除後
新しいお臍のデザインと縫合
余剰皮膚の切除量が多く、お臍の位置が変わる場合は、新しいお臍の位置を切開していきます。
余剰の皮膚と皮下脂肪を切除し、新たな臍を作成した後、皮下を二層に中縫合し、皮膚を形成外科の縫合法で丁寧に縫合します。
筋膜上は死腔となりやすいため、ドレーンを挿入し、血腫ができることを予防します。
余剰皮膚の切除
下腹部の切開による腹部リダクション手術の縫合直後です。
縫合した部分の下側、両サイドに見えるのがドレーンです。
術直後
下腹部と上腹部の同時切開による腹部リダクション
下腹部のみならず側腹部にも弛みが強い場合は下腹部のリダクションだけで行いますが、どうしても上腹部に弛みが残ることがあります。側腹部より上腹部の弛みを改善したい場合は上腹部のみ、または下腹部と上腹部のリダクションを同時に行うとより良い結果がでることがあります。
上腹部のリダクションでは胸部に長い傷跡が残ることは考慮しなくてはなりません。
fig7.下腹部と上腹部の同時切開の施術
fig8.下腹部と上腹部の同時切開での縫合
下腹部と上腹部の同時切開による手術法のデザイン
腹部脂肪切除(タミータック)の手術の下腹部だけの切開の際と異なり、筋膜上の剥離をあまり広く取る必要がないため、お臍の位置を変える必要もありません。
下腹部と上腹部の同時切開による手術法では、手術直後は乳房下に傷跡が残りますが、1年ほどでかなり目立たなくなります。
下腹部と上腹部の同時切開による術後
下腹部と上腹部の同時切開による腹部脂肪切除(タミータック)では、上腹部と下腹部にやや大きめの切開を入れるため、皮弁(腹部の中心部)の血行を考え広くは剥離しないことが大事です。
下腹部と上腹部の同時切開による腹部脂肪切除(タミータック)での術直後の状態の写真です。
腹部脂肪切除(タミータック)の詳細情報
施術時間 | |
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施術後の通院 | 術後3日で、傷の状態をチェック。術後1週間で包帯固定を外します。術後10~14日までで抜糸。 |
腫れについて | 3~4週間は腫れ、内出血があります。概ね落ち着くまでには2~3ヶ月。 瘢痕が目立たなくなるまでには1年、さらに瘢痕が落ち着いて線状になるまでには3~5年。 |
カウンセリング当日治療 | 不可 |
入院の必要性 | 1日入院 |
麻酔 | 全身麻酔 |
洗顔・洗髪・シャワー浴 | 洗顔・洗髪は手術翌日。シャワー浴は手術後3日から。 |
リスク(合併症・副作用 等)
感染 | 細菌やウイルス等による炎症。 |
血腫 | 術後、皮下や臓器からの出血が起こり、血液が貯留することです。 |
出血 | 諸後やや多い量の出血を見ることです。 |
内出血 | 術後概ね起こる皮下の血液の組織への浸透で、自然に吸収されます。 |
瘢痕(創跡) | 全ての皮膚切開創は、多少の傷痕が残ります。肌質的に目立つ人もいます。 |
肥厚性瘢痕(ケロイド) | 傷痕の中でも、膨らみや硬さが強いものです。原因は、遺伝性のため術前には防御することができません。ただし、治療法がございます。 |
色素沈着 | 瘢痕の一つですが、色素(メラニン)の沈着が主な原因です。 |
アレルギー | 薬剤が原因のものが多いのですが、金属やテープ等でも発症することがあります。 |
予定形態との差 | なるべく患者さまの意見は取り入れるようにしますが、完全な表現は無理がある場合があります。 |
微妙な左右不対称 | 人間の体は左右不対称であるため、手術後にも左右不対称は起こりえます。 |
皮膚壊死 | |
創離開 | |
皮膚の感覚鈍麻 |
腹部リダクション(腹壁形成)の手術費用
項目 | 治療内容 | 金額 (消費税込) |
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小タミータック | 腹部手術瘢痕形成・小範囲腹壁形成 | 660,000円 |
側腹タミータック | 側腹腹壁形成(両側) | 880,000円 |
下腹部タミータック(全域) | 側腹を含む下腹部全体の腹壁形成・臍形成・腹直筋寄せ | 1,760,000円 |
上腹部タミータック | 乳房下線での上腹部腹壁形成 | 880,000円 |
上下トータルタミータック | 上腹部・下腹部の同時腹壁形成 | 2,200,000円 |
臍形成 | 440,000円 |
美容的要素のあるものは自費になります。
腹部脂肪切除(タミータック)の手術の症例
症例1 いわゆる「太鼓腹」の下腹部のリダクションと上腹部の脂肪吸引、腹直筋ひきしめ

術前

術後
お腹全体がふくれいわゆる「太鼓腹」でした。下腹部のリダクションと上腹部の脂肪吸引、腹直筋ひきしめを全身麻酔下で行いました。
この症例の価格
腹部リダクション 臍形成 全身麻酔 モニター 138,2万円(税込)全身麻酔・入院込み
この症例のリスク・副作用
感染、内出血、色素沈着、表面の凸凹、左右差、皮下の硬結、血腫、肥厚性瘢痕、ケロイド
症例2 帝王切開の瘢痕の上に余剰の皮膚と皮下脂肪が乗り、2段腹になった

術前

術後
帝王切開の瘢痕の上に余剰の皮膚と皮下脂肪が乗り、2段腹になった症例です。帝王切開の傷跡とともに余剰皮膚、皮下脂肪を切除しました。静脈麻酔下で手術を行いました。
この症例の価格
腹部リダクション モニター 52,8万円(税込)
この症例のリスク・副作用
感染、内出血、色素沈着、表面の凸凹、左右差、皮下の硬結、傷跡、ケロイド、血腫
症例3 帝王切開の瘢痕の上に余剰の皮膚と皮下脂肪が乗り、2段腹になった

術前

術後
もともと肥満体質で太っていたのですが、急激にダイエットをして確かに成功しました。しかし、腹部に大きな弛みが残りました。
この弛みを切除し、これによって臍の位置が下方へ移動したため、その位置を修正しました。全身麻酔下で手術を行いました。
この症例の価格
腹部リダクション 臍形成 全身麻酔 モニター 173.8万円(税別)
この症例のリスク・副作用
感染、内出血、色素沈着、表面の凸凹、左右差、皮下の硬結
症例4 帝王切開の瘢痕の上に余剰の皮膚と皮下脂肪が乗り、2段腹になった

術前

術後
他院で腹部の脂肪吸引を受けたところ、上腹部の弛みと陥凹性の変形が出てしまいました。乳房下の腹部リダクションを全身麻酔下で施術しました。
この症例の価格
上腹部リダクション 脂肪吸引 モニター:105,6万円(税込) 全身麻酔・入院費用 33万円(税込)
この症例のリスク・副作用
感染、内出血、色素沈着、表面の凸凹、左右差、皮下の硬結、血腫、肥厚性瘢痕、ケロイド